茨城県養護教諭会創設70周年記念式典・平成29年度茨城県養護教諭会第3回研修会

<期日> 平成29年12月6日(水)
<会場> 茨城県立県民文化センター 大ホール

1 記念式典

○主催者あいさつ

茨城県養護教諭会長

茨城県養護教諭会は今年,創設70周年を迎えました。本日は,この70周年記念式典が盛大に開催できますことを心より感謝申し上げます。また,退職養護教諭会の皆様とこの70周年を一緒にお祝いできますことを大変嬉しく思います。
昭和22年,本会の前身である「茨城県学校衛生教育研究会」が創設されました。それから70年,全国でも指折りの規模を誇る会へと発展できましたのも,学校保健の移り変わりの中で,常に真摯に取り組み,養護教諭の存在を確固たるものとしてきた先輩の先生方の御努力や,多くの関係機関の先生方の御指導と御支援のたまものと感謝申し上げます。
養護教諭は,伝染病の蔓延防止のために衛生教育と救急処置を担い,心の健康問題が顕在化した時には保健室が心の居場所と期待されました。養護教諭職制70周年を迎えた平成23年は東日本大震災に見舞われ,心のケアと共に,学校の安全面にも力を発揮してきました。どの時代でも養護教諭は一人一人の子どもたちの心身に寄り添い,健やかな成長を促進してきました。
そして,今,様々な健康課題に対応するためにコーディネーター的な役割も求められています。今年3月に文部科学省より「現代的健康課題を抱える子供たちへの支援 ~養護教諭の役割を中心として~」が策定されました。この後予定されています基調講演では,中心的な役割を担われた前文部科学省の健康教育調査官をされていました岩崎信子先生をお招きしております。多様化する健康課題を克服するために養護教諭の果たすべき役割が見えてくるものと思います。
学校保健会会長の諸岡先生が先日,都道府県医師会長協議会におきまして,教育現場における養護教諭の活動実態と今後の支援対策についてご提案されました。諸岡先生はお目にかかるたびにいつも養護教諭のすばらしさを語ってくれます。学校に一人で多くのことを抱え,ハードワークではないのかと私たちの心身の健康を心配してくださっています。日本医師会で養護教諭への支援を取り上げてくださっていることに感謝したいと思います。
さて,今回の70周年事業として,皆様のお手元に,「創設70周年記念誌」と会誌「すこやか44号」をお届けしました。記念誌は学校保健に関する制度や養護教諭の変遷と共に,本会の歩みをまとめました。「すこやか」は,創設の翌年に創刊されました。誰もが真っすぐに伸び,すくすく育つようにとの願いから名付けられたとのことです。今回の「44号」には70周年への思いを多くの皆様にお寄せいただきました。記念誌と「すこやか」をとおして,それぞれの時代の学校保健の課題や養護教諭の姿を明確に知ることができます。改めて,先輩の先生方の実践と実績がこの会を進展させてきたことがわかります。会の発展の経緯を受け止め,未来へ受け継いでいきたいと思います。
子どもたちが心身ともにすこやかに育つことは,いつの時代もすべての人々の願いです。めまぐるしく変化する時代の中で,養護教諭として,健康教育への強い信念を貫きながら,臨機応変に対応できる柔軟さ,したたかでしなやかな心をもちたいです。創設70周年を機に,なお一層養護教諭同士の絆を深め,子どもたちの未来を培う養護教諭として,教育面と医療面からアプローチできる専門職としての力を大いに発揮していきましょう。
結びに,実行委員の皆様、そして,理事の皆様,本当にありがとうございました。また,茨城県教育委員会,茨城県学校保健会その他関係機関の先生方より御指導,御支援を賜りましたことに深く感謝申し上げます。そして,ご参会の皆様のご活躍を祈念し,挨拶といたします。


茨城県学校保健会長

常日頃,児童生徒の健康増進のために積極的に活動されている養護教諭の皆様に敬意を表します。児童生徒を取り巻く環境の変化は心身の健康に影響を及ぼし,いじめ,不登校などへの対応では学校医や警察とも連携していくことが大切になっています。また,健康で安全な生活を送るための対策も必要です。
養護教諭の役割が多様化する中,養護教諭の仕事の量,質を吟味しサポートする必要があるとの想いから,都道府県医師会長協議会において話をしました。また,現在,中央教育審議会のメンバーである全国医師会長にも養護教諭の増員について要望してほしいとお願いしてきました。
今後も将来を担う子どもたちを育てる養護教諭の働きに期待しています。


○来賓祝辞

茨城県教育庁学校教育部保健体育課長

茨城県養護教諭会が輝かしい節目の年を迎えられたことをお祝い申し上げます。会員の皆様の子どもたちへの深い愛情と専門職としての情熱を感じますとともに,これまでの献身的な活動に対してあらためて感謝申し上げます。
スマートフォンをはじめ子どもたちを取り巻く環境や生活様式の変化は,心身の健康に大きな影響を与えており健康課題も多様化しています。子どもたちが自己肯定感を高め,主体的で望ましい健康・安全行動を実践する資質や能力を身につけることが大切であり,そのためには健康教育の充実とすべての教職員が連携した支援体制の整備が必要です。養護教諭は専門的知識を持って指導にあたるほか,専門機関とのコーディネーター役など,その重要性はますます高まってきています。県としてはさらなる資質向上のための研修の充実と,医師会等の協力のもと心身の健康問題への対応に努めています。今後も学校三師,専門家,家庭との連携を図りながら課題の解決に向けて力を発揮してもらいたいと思います。
茨城県養護教諭会のますますの発展と学校保健の充実に期待しています。


  茨城県学校長会長

茨城県養護教諭会創設70周年おめでとうございます。
これまで,養護教諭の役割に真摯に向き合い,その使命を果たそうと努力し積み上げてきた実績に対し敬意を表します。児童生徒の健康問題が多様化,複雑化する中,課題を早期に見つけ対応することはもちろん,専門機関との連携やコーディネーター役にも期待するところです。
また,先生方が生き生きと働くことができなければ魅力ある学校とは言えません。チーム学校としての組織の活性化を図り,一人一人がその特性を活かし力を発揮できる環境が大切だと思います。


茨城県退職養護教諭会長

茨城県養護教諭会創設70周年おめでとうございます。
退職後も養護教諭として勤務したことに誇りと自覚を持って過ごしています。私は会の創設12年目に新採となりました。当時は自分の趣味によって校務分掌が割り当てられ,バレーボール部の顧問もしていました。苦しいこともありましたがそれを受けて立つ若さもありました。懐かしく思い出します。現在は家庭菜園や旅行など趣味を楽しんでおります。
現職の皆様には積極的に職務に取り組んでほしいと思っています。70周年を次の10年へのスタートにしてほしいと思います。


2 基調講演

「現代的健康課題を抱える子供たちへの支援 ~養護教諭の役割を中心として~」
びわこ学院大学特任准教授 岩崎 信子 先生
(前文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課健康教育調査官)

平成29年3月に文部科学省から発刊された「現代的健康課題を抱える子供たちへの支援~養護教諭の役割を中心として~」について,冊子の編集に携わられた岩崎先生より詳しく解説をしていただきました。
まず,この冊子が作成された背景となっている児童生徒の現代的健康課題について,学校保健健統計等のデータを元にその一つ一つについて説明がありました。さらに,それらの課題解決のための基本的な進め方としてまとめられている4つのステップについて,考え方や留意点を丁寧に解説していただきました。
岩崎先生のご講演を聞くことで,あらためて養護教諭に今求められていることが明確になり,全教職員,及び地域の関係機関と連携できる体制と整備することの必要性について確認できたと思います。

3 記念講演

「絵本による命の授業 ~くまのこうちょうせんせい かあさんのこもりうた より~」
シンガーソングライター こんのひとみ 先生

70周年の記念講演にふさわしく,とにかく癒やされた,涙が止まらなかった等の感想をたくさんいただきました。こんの先生ご自身の闘病についても触れながら,子どもたち,そして自分自身の命についてもあらためて考える時間だったように思います。また,私たち養護教諭に対する感謝の言葉や励ましの言葉をたくさんいただき,養護教諭でいて良かった,明日からもまた頑張っていこうという力をいただきました。

4 シンポジウム

「子どもたちの未来を培う養護教諭 ~健(したた)かに しなやかに~」
コーディネーター 茨城大学名誉教授,養護実践研究センター代表 大谷 尚子先生
シンポジスト    桜川市立南飯田小学校養護教諭 橋本 瑛里
つくば市立春日学園義務教育学校養護教諭 渡邉  由美子
茨城県立水戸桜ノ牧高等学校常北校養護教諭 西田 晃代
茨城大学教育学部附属特別支援学校養護教諭 内田 清香

初めに,コーディネーターの大谷先生から本会の創設当時の様子と会誌「すこやか」創刊号の紹介がありました。70年の歴史を振り返ったうえで,「茨城県養護教諭会創設70周年を記念して,あらためて養護教諭としてどうあったら良いかを考え,明日からの確実な歩みにしていく契機にしましょう」というお話しがありました。年代も校種も様々なシンポジストからは,日頃の実践や想いを述べていただきました。


<質疑より>

  •  研修等を通してチームとしての学校がどのように変わったのか?(橋本先生へ)
    →緊急時は一番近くにいる職員が対応するというイメージができてきた。先生たちの意識改革ができるような働きかけをしていきたい。
  •  新設の大規模校で保健室経営のシステムを構築する際の苦労した点は?(渡邉先生へ)
    →開校時は養護教諭が2人だったこともあり指導にまで関わることは難しかったが,管理職のバックアップが大きく,職員も皆協力的であった。当時から歯みがきについては実践していて,子どもたちからも手伝ってもらい支えられていた。スーパーバイザー的な先生と共に活動していければいいのではないかと思う。
  •  社会に出る目前である高校生たちに対して保健室対応以外のアプローチは?(西田先生へ)
    →学級担任と一緒に構成的グループエンカウンター(SGE)を行っている。学級が安心できる場所になることで,前に進もうという力になっている。部活動においても感情のコントロールが苦手な生徒に対して,できたことをほめるようにしている。生徒が動きやすい環境作りを考えている。
  •  思春期を迎えた子どもたちへの対応で困っていることは?(内田先生へ)
    →中等部になってからてんかんが初発で見られたケースで精神的に不安定になった。多くの子が小さい頃から医療とつながってるが,つながっていない場合に不安定さがより強く表れる。担任,部主任,管理職と連携しながら,医療機関につなげたり,保護者と面談したりということに関わっている。
  •  養護教諭のあり方について(退職養護教諭会の方から)
    すばらしい発表をありがとうございました。自分の健康を自分で守ることができる国民を育ててほしいです。病気の一次予防教育をぜひしていただきたいです。
  •  大規模校の中で養護をどのように貫いているのか?
    →保健室に来室してきた子どもたち一人一人に丁寧に関わっている。3人の養護教諭それぞれの得意分野を活かして日々執務にあたっている。

まとめとして,学校は失敗しながら最終的に学ぶべきことを学ぶところであるという言葉がありました。その学校の中で,養護教諭は教諭とは異なる独自の見方で,子どもの側に立ち,「あなたが大事」ということを伝えていける存在であると。「健かに しなやかに」を心に刻みながらこれからも養護教諭として頑張っていこうと感じさせてくれたシンポジウムでした。

*長時間の研修お疲れ様でした。研修会の感想や反省点などは各地区の理事さんにお伝えください。
*今後とも会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。