<期日> 平成30年8月7 日(火)
<会場> つくば国際会議場

1 開会行事

○ あいさつ
茨城県養護教諭会長
本日は県内各地より多数の皆様にご参加いただき,県教育庁保健体育課の先生方ご臨席のもと茨城県養護教諭会第2回研修会を開催できますこと,大変うれしく思います。
3年前の常総市における水害の記憶もまだ生々しく残っておりますところ,また今年,西日本で豪雨による大きな災害がおこりました。九州から中部地方に至る各地で児童・生徒を含む総数200名以上の方が亡くなり,多くの方が家を失うなど多大な被害をもたらしました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りし,被災された方々へお見舞いを申し上げます。
この集中豪雨も含め7月は「異常気象」だったと発表されましたが,全国的・記録的な暑さは現在もなお続いております。愛知県の小学1年生が,熱射病のために学校で倒れ,その後亡くなったことは大変痛ましく,衝撃的でした。さらに7月23日には,埼玉県熊谷市で,最高気温の記録を塗り替える41.1℃を記録しました。連日「命の危険がある暑さ」だと報道され,ついに,「災害レベルだと認識している」と気象庁が表明し,官房長官も公立小・中学校へのエアコン設置は緊急の課題と発言されました。
これまでも,熱中症の予防と対策については,養護教諭が中心となり,各学校で,学校を上げて十分にご指導されてきていると思いますが,これからは,危機管理の対象の一つとして,更に一段上の対応・対策を講じなければならない段階に入ったのだと,認識を新たにいたしました。
さて,第1回研修会では,ジャーナリストの秋山千佳さんにお越しいただき「保健室は『困っている子』を支える最前線」という演題でご講演をいただきました。その中で,子どもたちのさまざまな問題の根底に「貧困」があるとおっしゃっておられました。貧困など家庭の問題は,学校だけの力ではどうにもならないことが少なくありません。地域・福祉に上手に繋いで行けるように導入されたスクールソーシャルワーカーですが,まだ学校という組織の中では新しい制度ですのでよくわからないことがあると感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで,本日の午前中はスクールソーシャルワーカーの活用と連携を進めている小学校・中学校・高校の実践をそれぞれご発表いただき,その後,本県でスクールソーシャルワーカーとしてご活躍の吉田清子先生に,ソーシャルワーカーのお立場から学校との連携についてご講演をいただきます。
後半,講演の2つ目は,子どもの内面に焦点を当てて参ります。発達心理学をご専門とする法政大学の渡辺弥生先生より,子どもの心・感情の発達と支援のポイント,ソーシャルスキルなどについてお話しいただきます。

茨城県学校保健会事務局長
養護教諭会の皆様には日頃より本会の運営及び学校保健の推進に多大なるご理解とご協力を賜り,心より感謝申し上げます。本会は本年度の理事会,評議委員会を終え,現在計画に従い事業を進めているところです。本会には会報委員会,尿・心臓健診結果検討委員会,保健統計作成検討委員会,肥満対策委員会,褒賞選考委員会,健康づくり推進学校推薦委員会等に約30名の養護教諭の皆様に委員として献身的にご協力いただいておりますこと,この場をお借りしまして改めて感謝申し上げます。また,会員の皆様におかれましても生活習慣病予防対策・尿検査心臓健診結果検討・保健統計調査等でご協力をいただいております。今年度は,調査票等の学校コードの追加やファイルのエラーがあったことなどお手数をおかけしております。
さて,本日受付で食物アレルギーに関する調査結果に係るQ&Aの追補版についてという文書を配布させていただきました。これは県医師会学校医部会アレルギー専門小委員会から,以前調査を実施し配付いたしました食物アレルギーに関する資料についてのお知らせです。詳細は文中及び茨城県医師会ホームページに掲載されておりますので是非ご覧ください。

○ 来賓あいさつ

茨城県教育庁学校教育部保健体育課長
養護教諭の皆様方には各種事業の実施に際しまして,ご協力いただいておりますことにこの場をお借りし御礼申し上げます。また日頃から各学校におきまして学校保健の推進はもとより子どもたちの心身の健康管理や指導にご尽力いただきましてありがとうございます。
みなさんは児童生徒の身体的不調の背景にいじめや不登校,虐待などの問題が関わっているサインにいち早く気付くことができる立場であることから,児童生徒の健康相談において重要な役割を担っていると考えております。さらに,教諭とはことなる専門性に基づき心身の健康に課題のある児童生徒に対して健康面の指導だけではなく,生徒指導面での大きな役割を担っていると思っております。
問題を抱えた児童生徒を把握するためには,健康観察で把握しなければならない基本的な項目について全教職員に周知し,スクールカウンセラー,ソーシャルワーカー,医療機関など学校内及び地域の関係機関との連携について皆様が窓口になってコーディネーター的な役割を果たしていくことが期待されているとのことです。
今年は例年にない早さで梅雨が明け,7月中旬から災害レベルと言われる猛暑が続いております。今後も高温が続くことが予想されており,夏休み明けの運動会等で屋外での活動が増えますことから各学校においては気象情報に十分留意し,環境条件に配慮した活動を実施するよう熱中症事故防止に万全の対策を講じるようお願いします。養護教諭の皆様には職員に対し応急処置の方法を指導していただくなど引き続き事故防止のための適切な対応について重ねてお願い申し上げます。


2 実践発表

4名の先生方に困難を抱えている児童生徒への支援の在り方や関係者,関係機関との連携という内容で小・中・高等学校におけるそれぞれの実践をご発表いただきました。
「養護教諭の特性と保健室の機能を生かした不登校児童への支援の在り方」
北茨城市立平潟小学校 滝 恵 先生
「ひたちなか市におけるスクールソーシャルワーカーと小中学校の連携について」
ひたちなか市立勝田第三中学校 砂原 暁子 先生
「スクールソーシャルワーカーの活用について~養護教諭の役割に注目して」
茨城県立日立第二高等学校 渡邉 育子 先生
秀明学園日立高等学校   御代 昌代 先生


3 諸連絡

茨城県教育庁学校教育部保健体育課健康教育推進室指導主事 権田 多美子 先生
7月11日,愛知県におきまして小学校1年生のお子さんが学校の校外学習から戻った後に命を落とすといういたましい事故がありました。原因については今後究明されるかと思われますが,熱中症の疑いであるということまではわかっております。学校におきまして様々な取り組みをされているかとは思いますが,今一度全職員で熱中症の対応についてご確認をお願いいたします。
夏休み明けは運動会や体育祭,屋外での行事が予定されているかと存じます。それに際しまして,適切な休憩をとっていただくこと,水分補給の機会を与えること,また活動前と後の健康観察について養護教諭のみならず,また学校保健の担当者のみならず全職員が共通理解のもとで活動に臨めるように養護教諭の皆様のご協力をお願いいたします。
気象条件,環境条件によっては活動そのものを中止していただく,あるいは延期,見直しについて学校で検討いただくことになります。学校長が主体となって決めることではありますが,養護教諭の皆様には是非それらを判断する材料を専門的な立場から管理職の先生方に提供できるようお願いいたします。
また,愛知県の事故をうけまして,ご自分のお子さんが大丈夫だろうかと不安を感じている保護者の方もたくさんいらっしゃるかと存じます。学校で万全の対策をしていることが伝わらなければ,保護者としても不安が拭えないかと思われます。熱中症に関する学校での対策や家庭にお願いしたいことなど保護者に向けて積極的に学校での対策をお知らせいだけますようお願いいたします。


4 講演Ⅰ

「スクールソーシャルワーカーの活用と連携」
ソーシャルワーカーズオフィス吉田 代表取締役 吉田 清子 先生

人が問題を抱える時には,その人単独で問題を抱えているということはありません。その人とその人を取り巻く人々とのつながりのなかで問題は生じてきて,また,その人とその人を取り巻く人々のなかで問題が解決されるという捉え方ができるということでした。
児童生徒,保護者及び教師とよりよく連携しながら,教育現場を支援する福祉のプロとして,学校だけでなく様々な関係機関と情報や絆を結び,解決の糸口を見つけ出し,子ども自身がどうしたいのかというところを導き出していくそうです。
例えば,いじめの問題は貧困や発達障害等の背景があり,幼少時から予兆があるそうです。ちょっと気になるなと思った時点で教職員のなかで手を入れることができる「目」があるとよいということでした。いじめの問題を未然に防ぐという視点でソーシャルワーカーの活用を考えることも有意義だとおうかがいしました。


5 講演Ⅱ

「しなやかさとやさしさを育てる支援の在り方~心の予防接種で免疫力を高めませんか~」
法政大学文学部心理学科 教授 渡辺 弥生 先生

いじめなどの問題が起きないように,またそれを乗り越えることができるよう予防的に子どもを支援するうえで,発達心理学を知ることは適切に子どもを理解し,温かいまなざしを向けるために重要なポイントであると感じました。養護教諭が支援者として子どものこころに耳を傾け,きちんと聴いて応答するということは,ただ単に甘やかすこととは異なるということが印象に残りました。
学校全体でソーシャルスキルの考え方を取り入れ,学校は困難を抱え支援の必要な子どもにとって,失敗しても温かく,和やかで安らぎのある場所となれるよう心がけたいと思います。

*長時間の研修お疲れ様でした。研修会の感想や反省点

などは各地区の理事さんにお伝えください。
*今後とも会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

<忘れ物のお知らせ>
会場に以下の忘れ物がありました。お心当たりの方はメール等で事務局までご連絡ください。
・ハンドタオル(アーノルドパーマーの水玉柄)
・リップクリーム(メンソレータムリップ)