<期日> 平成30年12月3日(月)
<会場> 茨城県民文化センター
1 開会行事
〇あいさつ
茨城県養護教諭会
師走に入り,インフルエンザをはじめとする感染症の流行期となりました。また,持久走大会や修学旅行等の行事を控えている学校もあるかと思います。そのようななか学校を空けていらっしゃるのは,いつも以上に大変だったのではないでしょうか。
さて,今年は,夏あたりから,何かにつけて「平成最後の」という言葉がよく使われています。そうです,今回が,平成最後の,養護教諭会研修会となります。
昭和の終わりから平成の始めの頃,保健室は内申書に響かない,評価されない場所,学校のオアシスなどと言われ始め,養護教諭の全校配置が急ピッチで進んでおりましたが,養護教諭という名称から,養護学校教諭と間違われることも度々ありました。今,養護教諭は学校に無くてはならない存在になっていると自負しております。今日に至ることができたのは,昭和・平成と,一貫して,子どもたちの幸せを願う,ぶれない心を持ちつつ,時代の新たな課題に向き合ってこられた,たくさんの先輩方,そしてここにいらっしゃる先生方の弛まぬ努力と実践があったからこそだと,時代を振り返り,あらためて感じております。
人が目的を持って体内に取り入れるものは,食物と,広い意味での薬だけです。食物と薬はどちらも体にダイレクトに作用するもので,自分の健康は自分で守るという,セルフケアの観点からも,全ての人にとって重要なテーマと言えます。ぜひ,学校に持ち帰り活用していただきたいと思います。
茨城県学校保健会長
先月の茨城新聞に2017年度の小中高の不登校の児童生徒数の推移が掲載されました。小学校で852名全体の0.57%,中学校は2259名で全体の3.17%,高校では486名で全体の0.61%,合計3411名。6年連続で増加しているということでした。保健室登校を含めて養護教諭の先生方には日々対応していただいていると思います。このことからも養護教諭の職務については健康診断,保健教育,救急処置などの従来の職務に加えて,社会環境や生活環境の急激な変化がもたらす多種多様な問題への対応も求められているのが現状であります。現在,教員の働き方改革が大きな議論になっています。教員の職務内容も時代とともに大きく変化しましたが,その中でも質・量ともに最も変化して増大してきたのは養護教諭の職務であると感じています。そして学校現場では養護教諭の力量が学校運営のなかで重要なポイントをしめているのは明らかです。
このような現状をふまえ今年の3月には日本学校保健会の会長名で文部科学大臣に対し,学校保健施策に対する要望書がだされました。重点要望事項7項目のなかで第1番目に養護教諭の複数配置基準の見直し及び研修体制の充実が挙げられています。
このような状況のなか,養護教諭部会では今年度も学校保健の今日的課題に向けた充実した研修会を実施するなど養護教諭部会の意識の高さと若手教員の育成に向けた意気込みを感じることができます。今後ともひとりひとりがさらなるレベルアップを目指していただければと思います。
〇 来賓あいさつ
茨城県教育庁学校教育部保健体育課長
先日,文部科学省において児童生徒の問題行動等生徒指導上の課題に関する調査結果が発表されました。そのなかで本県のいじめの認知件数につきましては平成29年度19870件となっており前年度の13139件より6731件増加しております。また,不登校については特に中学校で多く,各クラスにひとり程度不登校生徒がいる割合です。養護教諭の皆さんにはその職務の特質から児童生徒の健康問題を発見しやすい立場にあり,生徒指導面においても重要な役割を果たしております。学校内外の関係者の連携のもといじめを含めた児童生徒の心身の健康問題の早期発見早期対応に引き続き取り組んでいただけますようご期待申し上げます。
今年もインフルエンザや感染性胃腸炎の流行の時期を迎えています。特に感染性胃腸炎に関しましては先日県内の小学校においてノロウイルスと思われる集団感染事例が発生しました。学校は児童生徒が集団生活を営む場であることから感染症が発生した場合は感染が拡大しやすく教育活動に大きく影響を及ぼすこともあります。そのため予防や感染拡大防止につきましては速やかな対応が求められております。各学校におきましてはうがい手洗い等を中止とした基本的な生活習慣の定着や日常の健康観察の充実を図るとともに,感染症情報収集システムを活用して地域の流行状況を把握して保護者,学校医,教育委員会,保健所等の関係機関と連携して,感染症が疑われる場合も含めて適切な対応に努めていただきますようお願いいたします。
2 講演Ⅰ「食習慣の自立に向けて~食育とスポーツ活動~」
筑波大学 体育系准教授 麻見 直美 先生
大人が子どもに対して与える食の財産は食生活の自立であり,子どもたちが将来的に「食の自立」ができるよう,望ましい量と質の食事について理解し,食品や食事を適切に選択できるようにするために食育をします。子どもたちにどのような食習慣を身につけたらよいのかということを伝えることが大切で,大人が食事を作って子供に与えるだけでなく,親と過ごせる時間のなかで,子どもが成長していくとともに「食の自立」ができる仕掛けを家庭でももつ必要があると学びました。
子どもたちの食事の質や量が適切かどうか判断するためには身長や体重など体格の評価が有効であり,年に数回ではなく,もっとこまめに身長・体重の測定の機会があるとよいそうです。特にスポーツ活動をしている子どもたちでは,2週間毎に身長・体重を測定していると身長の伸びのスパートを見出すことができ,この時期は成長に使われるエネルギーを運動にとられないよう練習を休ませ,タイミングを逃さずに成長を優先する国もあるそうです。養護教諭としてスポーツ活動をしている子供たちに対する保健教育に生かすことができる有意義な研修となりました。
3 実践発表「中学校における医薬品に関する教育の在り方
~市内中学校での継続的・組織的な授業実践を通して~」
筑西市立下館西中学校 藤田 瞳 先生
筑西市立下館北中学校 海老沢 友維 先生
筑西市立協和中学校 友常 優子 先生
セルフメディケーションの実践者として必要な医薬品を正しく使用する保健教育について市内の養護教諭の先生方が共同研究と授業実践を積み重ね,平成29年度「教育に関する研究論文」に入選された成果をご発表いただきました。
保健体育教諭や学校薬剤師の先生と連携したティーム・ティーチングによる授業実践を詳細にご報告いただき,具体的に医薬品に関する教育について学ぶことができ,とても参考になりました。
4 講演Ⅱ「学校における薬教育のすすめ方」
茨城県薬剤師会学校薬剤師部会幹事 石井 典一 先生
小学校において薬物乱用防止教育として実施された薬教育のアクティブラーニングによる授業実践についてご講演いただきました。薬物乱用防止教室は中学校・高等学校では義務化されていますが,小学校でも薬物乱用防止教室は必要であると思われます。薬教育や薬物乱用防止教育に関して学校薬剤師を積極的に活用してほしいというお言葉をいただきました。
また,ドーピングの教育についてはスポーツファーマシストという専門の薬剤師がいらっしゃるそうですが,今後,国体やオリンピックなどにおけるドーピングの教育が必要である場合にも学校薬剤師にご相談することをお勧めいただきました。