<期日> 令和元年8月5日(月)
<会場> つくば国際会議場

1 開会行事

○ 主催者あいさつ
茨城県養護教諭会長

若年層の自殺が、深刻な状況にあります。厚生労働省等の発表によると、自殺をした人の全体数は9年連続で減少している中、10代の自殺者は前年より増加し、人口10万人あたりの自殺率でいうと、統計を取り始めた1978年以来最悪との報道もありました。
自殺の原因は様々なことが考えられ、それらが複雑に絡み合っているものと思います。学校・家庭・地域・行政も含め、それぞれができ得る対応をしっかりと、していかなければならないと考えます。養護教諭は子供たちの態度や様子の変化に気づきやすい、重要な立場にあります。子供たちに相談をしてもらえるような信頼される大人の一人であるために、常に感性を磨くべく、学んでいかなければならないと思います。
本日の研修会のテーマである多様性や共生に関する話題は身近な問題です。この7月から、茨城県で、同性カップルも夫婦同様のパートナーとして認めるという、パートナーシップ宣言制度が始まったことや、スポーツ界で、テニスの大坂なおみ選手、陸上のサニブラウン選手、バスケットの八村塁選手など、日本以外の国にもルーツを持つ日本人選手の活躍、そして先日の参議院選挙で、体に重い障害を持つ二人の方が議員となったことなど、考えるきっかけになることが周囲にたくさんあります。
また、LGBT等性的マイノリティと言われる人たちが、自殺を考えたり、自殺を図ろうとしたりした割合は、そうでない人々に比べ、何倍も高いとの報告があります。自殺予防という観点からも、今、私たちが、違いを認め、ともに生きていこうとする、「多様性」と「共生」について学ぶことは大変意義のあることだと思います。


茨城県学校保健会長

学校保健会では,会報編集委員会,尿・心臓病検診結果検討委員会,保健統計作成委員会,肥満対策委員会,ほう賞選考委員会,健康づくり推進学校推薦委員会等の委員会がございます。養護教諭の皆様には約30名の方に委員として献身的にご協力をいただいておりますことお礼申し上げます。
調査結果等につきましては小・中学校におきましては生活習慣病予防対策の結果は支部を通してまとめて報告及び本会ホームページに公開、尿検査心臓検診結果のまとめは冊子で,保健統計調査については教育情報ネットワーク上での公開となっておりますことはご存じのことと思います。医師会や県からの委託事業で本会が行っているこれらの調査結果については貴重な資料で他県に実施を見ないものもございますので,ぜひ地域の実態や自校の実態と比較できる基礎データとして十分ご活用いただきたいと思います。


〇 来賓あいさつ
茨城県教育庁学校教育部保健体育課長

子どもたちが抱える健康課題は生活習慣の乱れ,いじめ,不登校、児童虐待などの心の健康問題のほかアレルギー疾患、性に関する問題、薬物乱用、感染症など多岐にわたり顕在化しております。養護教諭の皆様には校内体制のなかで連携の要となり専門性を生かし適切に対応することが求められています。そのような状況のなか実際学校の状況に応じて多様な執務をこなしている現場の養護教諭の活躍をうかがう機会がございます。
令和2年度採用の教員採用試験では229名の養護教諭への志願がありました。約6.2倍を勝ち抜いた後輩たちが仲間として加わることになります。熱い志をもった後輩たちにも知見を伝達しながら今後も力を合わせて本県の児童生徒の生きる力を高め心身共に健康な人間の育成に携わっていただきたいと思います。

2 アンケート結果報告

今回の調査は,学校におけるLGBT等性的マイノリティの児童生徒や性の多様性に対する理解や支援についての実態を把握し,会員の皆様にとってより有効な研修を計画するために行いました。お忙しいなか,任意の調査であるにもかかわらず6割近い会員の皆様にご協力いただきましたこと大変感謝しております。今後とも会員の皆様のご意見,ご理解ご協力をお願いいたします。

3 講演Ⅰ

「LGBTや性の多様性について知る~子どもの声と学校でできること~」
公立小学校非常勤講師 上智大学文学部非常勤講師 鈴木 茂義 先生

日々の教育活動のなかで,ひとりひとりを大事にするという多様性の尊重を重視した学校風土を培うことが大切であると学びました。日常生活や教育活動を通して,「LGBTであるか,そうではないか。」という考え方ではなく,社会のなかでの多様性と個人のなかでの多様性の2つの視点から,すべての人は多様性のなかの一部であることを学校全体で大事にしていきたいと思いました。
支援者の姿勢として,子どもは子どものなかに解決策もっていることがあるので,子どもの話をよく聞いて教えてもらいながら解決策を探るということがとても勉強になりました。子どもによって支援者にしてほしいこと,してほしくないことは異なるのでひとりひとりに応じたオーダーメイドな対応や支援を心がけたいと思います。

4 講演Ⅱ

「他者と共に生きる〈共生〉のための保健教育」
宮城学院女子大学教育学部 教授
宮城学院女子大学大学院健康栄養学研究科 教授 戸野塚 厚子 先生

How-toではない実践の土台となるぶれない教育観を重視する考えに非常に感銘をうけました。
スウェーデン,フィンランドでは教科横断型学習で「共生」をテーマにカリキュラムを取り組んでおり,そのなかには今後の日本の保健教育やいじめの問題に対する創造的なヒントを見出すことができるということでした。特に21世紀に生きる子どもたちに必要な重要な学びとして以下の2つを示されました。
① 健康問題を社会的な問題として構造的にとらえる力を養うこと。
② 「共生」する社会を構成するために多様性の理解と寛容性を育むこと。
その実践のために,自分ができることろから,他者とともに希望をもってまず一歩を踏みだすことが大事だという励ましのお言葉をいただきました。

5 講話

「学校検尿の精度管理と尿検査の重要性」
茨城県医師会常任理事
学校医部会学校保健対策委員会委員長
大場内科クリニック 院長 大場 正二 先生

緊急受診システムの導入の経緯を学び,学校検尿の重要性を再確認でき大変有意義でした。早朝中間尿を提出することが困難であるという実態は多くの学校でみられます。
ひとりでも多くの児童生徒が受検できるよう関係諸機関やご家庭と連携して適切な対応を心がけたいと思います。
多くの質問に回答いただきまして大変勉強になりました。ありがとうございました。