<期日> 令和元年12月10日(火)
<会場> ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)

1 開会行事

○ 主催者あいさつ
茨城県養護教諭会長

10月の台風19号により,県内各地に甚大な被害をもたらしました。学校やご自宅が被害に遭われた方々,また,体育館等が避難所になったという学校の先生方,復旧作業・衛生管理・心のケア等,本当に大変な思いをされたと思います。心より,お見舞い申し上げます。今回の災害については,熊本県の養護教諭研究会からも,お見舞いのメールをいただきました。そして,平成28年の熊本地震の際にまとめた,「アンケート報告」を送ってくださいました。思えば,熊本地震直後には茨城から何人もの養護教諭がボランティアとして被災地に支援に向かわれましたが,今度は熊本の方々が茨城へと心を寄せてくださいました。改めて,養護教諭同士の温かい繋がりを感じることができました。アンケート報告は,理事会でも紹介させていただきましたが,ご覧になりたい方は事務局へお声をかけて下さい。
さて,先日,大阪の小学生がSNSで知り合った男性に誘拐され,栃木県で保護された事件がありました。そこに茨城の中学生も関わっており,衝撃を受けましたが,その後,同様の事件が相次いで報道され,さらにショックを受けました。
内閣府の発表によりますと,小学生では3人に1人,中学生では3人に2人が,スマートフォンを使用しているそうです。スマホに向かう時間が増えれば増えるほど,人と人が面と向かってやり取りする機会が減っていきます。言葉や表情で表現しあう(ライブな)コミュニケーションへの苦手意識がどんどん大きくなってしまっているように感じます。「学校が嫌い」「家に帰りたくない」などと,ネットにつぶやく前に,身近な,信頼できる大人に相談してくれていたらと思わずにはいられません。
本日は「信頼され安心できる養護教諭になれるように」との願いを持って,この後の,齋藤由起子先生のご講演からコミュニケーションスキルを学びたいと思います。
午後は,「ノーメディアチャレンジについての取り組み」の実践を那珂市の先生方にご発表いただきます。そして「ネット・ゲーム依存の実態と対応」について,心理療法士 三原聡子 先生よりご講演をいただきます。生まれた時から,ネットのある社会に生きる子供たちの健康をいかに守るか,ともに考えたいと思います。
最後に,茨城県で養護教諭として勤め上げて退職した方々で組織する「退職養護教諭会」とい会がございます。本県の学校保健を推進してきた誇りと絆を基盤に活動し,後輩の私たちを見守ってくれています。その退職養護教諭会が今年,創設40周年を迎え,10月に記念式典が行われましたので,本会からも式典に参列し,お祝いをさせていただきましたことをご報告いたします。


茨城県学校保健会長

皆様方には常日頃それぞれの学校において心身の健康の保持増進に関しましてご尽力をいただきまして,学校保健会を代表いたしましてひとこと御礼とご挨拶を申し上げます。
本日は年末の大変お忙しいところ茨城県学校保健会養護教諭部会の令和元年度の第3回研修会にご参集をいただきまして本当にありがとうございます。また,本会の各専門委員会におきまして多くの先生方にご協力をいただいておることに改めて心から御礼申し上げます。
新元号令和の幕開けとなりました今年も残すところあと3週間ばかりとなりました。今年も大雨,台風の災害がありまして茨城県各地での豪雨災害,浸水災害があったとのことで心からお見舞いを申し上げます。いち早い復旧復興を祈念いたしますとともに新しい茨城県の振興のためにも尽力していきたいと思います。
また大きな被害に見舞われた方もいらっしゃるので犠牲者のかたには哀悼の意を表します。
さて,日頃より学校保健学校安全の推進にご尽力いただいておりますが,養護教諭の職務に関しては従来の職務に加えて,生活環境や社会環境の急激な変化がもたらす多種多様な問題への対応が求められる現状にあります。教員の働き方改革が大きな議論になっておりますが,学校保健の立場から特に養護教諭の働き方をサポートしないと学校保健そのものが成り立たないと思っております。中央教育審議会において日本医師会の常任理事の道長氏が養護教諭の働き方改革として人数を増やして仕事量を減らそうと意見しております。
一人職であります養護教諭が若手の養護教諭を支援できるような制度の構築が大事であろうと思っております。これからは同じ地域の先生方と横のつながりを大事にしまして太く大きなつながりをつくろうと地域関係団体との連携のもとにチーム学校を念頭において日々の職務に当たっていただきたいと思います。
今年はラグビーが大きな話題となりましたが,学校もワンチームとして我々と一緒にサポートしていきたいと思っております。思いが確実に相手に伝わる話し方やゲームネット依存ということに関しまして大変役立つ内容でございますので,実践発表も含めて有意義な研修となることをご祈念いたします。


〇 来賓あいさつ
茨城県学校教育部保健体育課長

日頃から養護教諭の皆様には各学校において学校保健の推進はもとより子どもたちの心身の健康管理や指導にご尽力いただきまして心より感謝申し上げます。
今年から元号が令和になり,そして茨城県においては第74回国民体育大会いきいき茨城ゆめ大会が開催されました。各学校におかれましては大会運営にあたり大変ご協力をいただきましたことにあらためて御礼申し上げます。大会では本県の選手が児童生徒の声援の後押しもあり,天皇杯・皇后杯を獲得することができました。選手の生き生きとした競技の様子を見ていると,心身ともに健やかであることはとても素晴らしいものだと改めて感じた次第です。教育の目的は,心身ともに健康な国民の育成であると教育基本法に示されております。健康教育を含め教育の効果はすぐに実感できるものばかりではございませんが,児童生徒の健やかな成長のためにご尽力いただいていることが社会で活躍された選手のような心や身体を育むことにつながるものと感じております。本日の研修にはゲーム・ネット依存についての講演もあるそうですが,茨城国体の期間中にはオンラインゲームで対戦するeスポーツ都道府県対抗スポーツ選手権も行われました。eスポーツについては賛否両論意見も様々ではございますが部活動と同様練習のしすぎで体調を崩してまでやらないようにすることが大切であると思っております。
さて今年は例年より早くインフルエンザの本格的な流行が始まっております。養護教諭の皆様におかれましては引き続き健康観察や予防対策の強化についてご尽力をお願い申し上げるとともに児童生徒を含めご自身の健康に留意されますようお願い申し上げます。

 

2 講演Ⅰ

「想いを形に・心を形に
~信頼され安心できる養護教諭になるために 無意識の加害者にならない~」
スクールコミュニケーションサポート代表  齋藤 由起子 先生

スイス行きの空の旅を楽しむ気分で始まり,齋藤先生の笑顔を絶やさない魅力あふれる語りにひきつけられました。何気ない一言や受け答えが相手を傷つけてしまう,不安な気持ちにさせてしまうことがあることを思い返し,自分に置き換えて考えてみると納得できる話で理解が深まりました。相手の怒りは第二次感情でありその理由(第一次感情)に目を向けることの大切さに気付かされました。日頃より,対人援助職として相手に寄り添った言葉かけや行動することができる,安心できる養護教諭になれるよう努めたいと思います。

 

 

3 実践発表

「ノーメディアチャレンジについての取り組み
~那珂市小中一貫教育の枠組みでの実践を通して~」
那珂市立木崎小学校 養護教諭  根本 藍 先生
那珂市立瓜連中学校 養護教諭  大金 理恵 先生

 長時間のメディアの使用について学校保健委員会の議題としてとりあげ,年3回中学校の期末考査時期に合わせ小・中学校一斉にノーメディアチャレンジデーを設定し,児童生徒のテレビやスマホの利用時間を減らしたという取組についてご報告いただきました。
メディア中毒になると視力が低下するばかりでなく,気力や体力の低下,コミュニケーション力の低下がみられるといった内容で中学生が作成した指導用動画を活用し,中学校の養護教諭が小学6年生の保健学習に活用しているという取組も大変有意義だと感心いたしました。
今後の課題として,メディアを完全に切り離すのではなくメディアコントロールを意識づける必要があると考えられます。学校での保健教育と家庭の意識の向上により子どもたちの健康を守っていけたらという願いが伝わるご発表でした。

4 講演Ⅱ

「ゲーム・ネット依存の実態と対応」 
独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター
主任心理療法士 三原 聡子 先生

久里浜医療センターは日本で初めてのインターネット依存専門外来を始められた病院です。外来に来られている方の約90%がゲームに依存しており,ゲームに熱中し,利用時間などを自分でコントロールできなくなり,日常生活に支障が出る状態になり受診されます。その平均年齢は17歳で中学生,高校生,大学生がほとんどだそうです。
WHOは国際疾病分類(ICD-11)の「嗜癖行動による障害」の分類に「ゲーム障害」を加えました。そのため,今後は医療機関での治療が充実すると考えられますが,その予防や対応には家庭・学校・地域を含めた包括的な対策が求められます。
ネット依存者に発生してくる問題は骨密度の低下,低栄養状態,エコノミークラス症候群,睡眠障害など身体的・精神的な健康に対する悪影響ばかりでなく,子どもの脳の発達や情緒の発達の面から考えてもその影響は計り知れないことを改めて学びました。
ゲーム依存の発症には促進要因と抑制要因があると考えられ,現実生活での不全感や疎外感(いじめや部活動での挫折体験),何かにはまりやすい性格などが促進要因となる一方で,現実生活での達成感や充実感,ストレス対処へのスキルが抑制要因となります。
学校や家庭の対策としてネットの使用開始年齢を遅らせる,使用時間を少なくさせる等の予防対策と同時に,長期休業明けの遅刻や欠席などの依存になり始めた時のサインを見落とさずに,本人から話をよく聞いて早期発見・早期対応につなげる必要があることを学びました。
日頃より,養護教諭として子どもたちが現実の人と関わることが楽しいという実感を支持し,ゲームやネット以外での活動で楽しめるもの,自信がもてるものを応援する姿勢を心がけていきたいと思いました。